最悪なジャンクサイエンス「片親疎外症候群」

私が共同親権推進でよく見かける「虚偽DV」というワードを非常に危険だと思う理由のひとつが、「片親疎外症候群」というニセ科学です。INDEPENDENT紙に、この症候群提唱者の死亡記事があり、大変わかりやすくまとまっていたので、ツイートしたものをこちらにも転載します。(一部誤字などは修正しました。)
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「子供が親Aを嫌うのは、親Bが子供に吹き込む嘘と洗脳による病気である」という、DV加害者にとって極めて都合の良い「片親疎外症候群」という用語がある。以下は、この用語の提唱者、アメリカの精神科医リチャード・アラン・ガードナーのobituary記事(INDEPENDENT, 2003, May 31)による説明。
 
リチャード・アラン・ガードナー、精神科医、1931年4月28日ニューヨーク生まれ。MD取得1956年。2回結婚(1男2女)。2003年5月25日、ニュージャージー州テナフリーで死去。
 
数年前ピッツバーグ郊外の子供の監護権を巡る係争で、10代の少年3人が、父からの身体的虐待を理由に面会強制の中止を訴えた。
 
判決は子供たちの訴えではなく、父親が雇った専門家、コロンビア大学教授ガードナーの証言を重んじた。ガードナーは、少年たちは母親の洗脳の結果嘘をついていると主張、「脅迫療法」と称するものを推奨。グリーコ家の3人の少年は、「敬意を持って従順に父親との面会を果たすべし。さもなければ母親が刑務所に行く」と言われた。
 
まもなく16歳の長男ネーサン・グリーコが自室で首を吊って自殺。残された日記には、人生が「終わりのない苦痛」になったと書かれていた。しかしガードナーと法廷は、地元紙が生き残った2人の監護権協定の変更を暴露するまで悔いることはなかった。
 
この「脅迫療法」はガードナーのもっと広い理論の一部で、米国の全国各地の家庭裁判所では「片親疎外症候群」として知られる。この理論は近年米法廷で信頼を得てしまった最も陰険なジャンクサイエンスの一つだが、
 
”子供への虐待で配偶者を非難する母親は全員、本質的に、多かれ少なかれ嘘をついている。母親は子供たちを父親から「疎外」するためにこうした嘘をつく。これは親としての衝撃的な責任放棄であり、彼女は、加害者とされる者に全面的に監護権を渡すべきである。”と主張する。
 
これは、そもそも、ガードナーの最も熱心な支持者である離婚する父親の利益を守るために作られた安っぽい論理であるだけでなく、ここ15年間に何百何千のアメリカの家族を破壊してきた。
 
州という州で、法廷はガードナーの学歴を鵜呑みにして、たとえ警察記録や医療記録、教師やソーシャルワーカーの証言が母親の告発を裏付けていても、子供を加害者の保護下に置いたのである。
 
「片親疎外」概念は現在までに判例法として定着し、ガードナー自身が関与していない何千もの紛争を左右してきた。しかし、この概念には何の科学的根拠もない。
 
アメリカ精神医学会やその他専門機関によって認められているわけでもない。1980年代後半からガードナーがこのテーマで書いた一連の書籍はすべて自費出版であり、通常の査読プロセスを経ていない。
 
性的虐待の申立の信頼性を判定するための彼の手法は、著名な家庭内暴力専門家、ワシントン大学ジョン・コントによって、「これまでこの分野で見たうちで、おそらく最も非科学的なゴミだ」と酷評されている。
 
高葛藤の離婚裁判の経験者なら、母親が配偶者に対して虚偽の申し立てをする事例があることは誰も否定しない。しかしガードナーはそれ以上のことを主張する。ガードナーによれば、90%以上の母親が嘘つきで、子供にその嘘を繰り返すよう仕向けているから、裏付けの証拠を気にする必要はないという。
 
虐待を主張する母親は、自分の子供に対する性的傾向を偽装された形で表現しているというのが彼の説明である。
 
しかも彼は、近親姦であろうがなかろうが、小児性愛はそんなに悪いことではないと示唆した。
 
彼は『性的虐待のヒステリー:セーラム魔女裁判の再来』(1991年)に、”現在のヒステリーに対処するために社会が取るべき措置のひとつは、「それをやめて」、「小児性愛者の行動に対してより現実的態度をとることだ」と述べている。
 
さらに彼は「小児性愛は文字通り何十億もの人々に広く受け入れられている」と述べている。以前、インタビュアーから、もし自分の子供が父親の性的虐待を訴えたら母親はどうするべきかと問われて、ガードナーは次のように答えた。
 
「母親はどう言うべきか、ですか? お父さんのことでそんなことを言ってはいけません。もし言ったら殴りますよ[と言えばいいのです]」
 
家庭裁判所判事がこのような人物をまともに取り上げるとは信じがたいが、父親が離婚裁判に費やす費用が多い敵対的な制度では、ガードナーの理論が驚くほど説得力を持ってしまった。
 
米国児童青年精神医学会誌は1996年、ガードナーの著書『性暴力評価プロトコル』について、「臨床的・科学的客観性を装った、性的虐待の申立を虚偽と判断するための方策である」と述べた。見れば弁護人の間でベストセラーになるだろうと思うはずだ。そして実際にそうなっている。
 
ガードナーの書籍は、彼が影響を与えた判決によって、心理的に、また多くの場合肉体的に傷つけられた母子を生み出してきた。ガードナーの初期の事件のひとつに、メリーランド州の物理学者を「親権侵害者」とし、親権を持つ資格がないとしたものがあるが
 
その物理学者はその後、元夫によって射殺された。しかし、ガードナーは妻が真の悪人だったという考えを変えなかった。彼の主張によれば、妻の嘘が夫を一時的に精神異常にしてしまったのだという。
 
ガードナーの経歴は意外に平凡である。1931年NYブロンクス生まれ。ニューヨークの様々な名門大学で医学と精神医学を学び、米軍の精神科医としてドイツに滞在。1963年コロンビア大学の児童精神医学教室に赴任し、1983年精神医学の臨床教授に就任。子供の離婚体験の専門家として長年尊敬を集める。
 
しかし「片親疎外症候群」説を1980年代に発展させてからはコロンビア大学と徐々に疎遠になり、ニュージャージーで個人開業。その過程で、彼は正真正銘のアメリカの怪物になってしまったのである。
 
原文はこちら。一部deepl翻訳使用。
Dr Richard A. Gardner
INDEPENDENT.CO.UK
Dr Richard A. Gardner
Child psychiatrist who developed the theory of Parental Alienation Syndrome